第85章 一億五千万

嵐の予感が漂う隣室とは対照的に、福田祐衣がいる個室は春風のように穏やかな空気に包まれていた。

彼女はテーブルの上のデザートを優雅に手に取り、一口味わった。意外にも悪くない味だ。

「さすが井上さん、稼ぎの桁が違いますね。その金払いの良さ、私どもには到底真似できません」

「私なんて、全財産をはたいてもあんな大金は用意できませんから。泣く泣く諦めるしかありませんでした」

福田祐衣はわざとらしく溜息をつき、悔しがる素振りを見せた。

その声は大きくもなく小さくもなく、ちょうど隣の個室に届く絶妙な音量だった。

「ガシャーン!」

グラスが床に叩きつけられる音が響き渡り、福田祐衣の口元の笑みは...

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